来春、介護の専門学校を卒業予定の若者が施設見学に来られました。初々しさが残る好青年で、ぜひエクセレントケアシステムに入社していただき、共に働くことが出来ると嬉しいなあ・・・と思っていました。
すると後日、彼からいくつか質問があるとのことで問い合わせがありました。その質問のうちの一つが「齋藤施設長が施設を利用される方に接する際に、一番気をつけていることは何ですか?」というものでした。
私はすぐにこう答えました「それはね、どの人に対しても自分のお母さん、お父さん(彼にとってはおばあさん、おじいさん)に接する時と同じようにすることですよ。」と。
介護の仕事は簡単な仕事ではありません。人の嫌がることや、汚れることをその生業としなければならないこともあります。愛情と優しさをもって、高齢者の方々に接していかなければ成り立たない仕事であると私は考えています。

自分のお母さん、お父さんに接するようにとは、「子どもとして自分がお母さん、お父さんに愛されたように今度は自分が愛をもって接する」ということにほかなりません。
私は還暦近くなりますが、80歳を過ぎた母親は、未だに深い愛情をもって私のことを愛してくれています。「自分はどうなっても、息子のあなたが幸せであればそれでいい」と、毎回のように伝えてくれます。「母親の愛っていつまで経ってもそんなんなのー!」と驚きましたが、その言葉を聞く度に、「あぁ、自分が幸せになることが、母親を幸せにすることなんだな」と、思考が変わっていきました。
少し話が変わりますが、クリスマスに皆さんプレゼントをもらったり、あげたりしたことがあると思います。実はプレゼントってもらうより、あげる方が嬉しいとご存知でしょうか。プレゼントをもらった相手がどれだけ喜ぶかを考えながらプレゼントを選ぶ時間、プレゼントを渡すまでのワクワクする時間、そしてプレゼントをあげた瞬間の相手の表情。しかし、これはプレゼントをもらった経験があるからこそ、感じられる喜びでもあります。
それと同じように「どれだけ愛されたか?」を知ることが、「どれほど愛することができるか?」に深く関わっていることを知っていただきたいのです。自分が担当する方にどれだけ愛をもって接することが出来るかは、どれだけ自分が愛されてきたのかを深く知ることによって変化するのです。

介護を仕事としていくという素晴らしい志を持った若い皆さんに、ぜひこのことをお伝えしたいと思っています。介護の現場で働くにあたり「どのようにしたら良いか分からない」と不安に駆られた時は、少しだけでいいですから、自分が今まで、どのような人から、どれほど愛されて生きてきたのかを考えてみて下さい。
「自分が愛されたようにご利用者様にしてあげればよいのです。」
「自分は誰からも愛されていない」と嘆く方もおられるかと思います。しかし、今こうして生きて、そのようなことを考えている自分がそこにいるということが、愛されてきた証拠なのです。生まれたばかりの人間は、自分ひとりでは何ひとつすることが出来ません。何の見返りを求めない母親・父親の献身的な行為によって、命が育まれているのです。

自分の母親が、どれほどあなたのことを愛おしく思っていたか、考えたことがありますか。生まれたばかりのあなたをその手に抱き、どれほど慈しみ深い瞳で自分のことを見つめていてくれたのか、考えたことがありますか。自分の命を投げうってもいいという気持ちを持って、あなたのことを産み、育て、愛してくれているのです。
母が、その手に自分を抱き、希望と期待と限りない愛情を持った瞳で見つめてくれたように、今、まさに介護の助けを必要とされている方に同じ眼差しをもって見つめてあげてください。難しいことではありません。それだけでいいのです。
「その瞳を知らずして、その眼差しで人を見つめることは出来ないでしょう。」
そして「愛する人」はやがて「愛される人」となります。「愛され、愛し、また愛される」この素晴らしい愛の循環が介護の現場には確かに存在するのです。
人はその仕事を通して人間として成長・成熟するものです。
介護の仕事を通して「愛される人となれ」
これが、若い皆さんよりちょっとだけ長く人生を生きている私からのメッセージです。
介護付き有料老人ホーム
エクセレント町田
施設長 齋藤 一成